セイコー プレザージュ × 松本幸四郎氏 対談
日本の伝統に息づく美と技

VOL.4 漆ダイヤルモデル ー 深遠なる漆黒に宿る艶やかな「Japan」

人の顔が見えるモノづくりに大きな刺激を受けました――。左腕に着けた「セイコー プレザージュ」を見つめながら、歌舞伎俳優の松本幸四郎さんはそう話します。日本ならではの美意識を世界に発信する時計づくりが、伝統芸の可能性を探り続ける自身の取り組みと重なったからです。そんな松本さんが伝統工芸の匠たちと語り合いました。有田焼、七宝、琺瑯(ほうろう)に続く第4回は、奥行きを感じさせる独特の色合いが存在感を醸し出す漆ダイヤルモデルがテーマです。

漆は、漆の木の樹液から精製された天然の塗料。その歴史は古く、黒漆で模様を描いた彩漆(さいしつ)土器が縄文時代前期の遺跡から出土しています。戦国時代には、甲冑(かっちゅう)や馬具などの金属や革の強度を高めるためにも使われました。表面に鏡面のような艶(つや)が出るのが特長です。螺鈿(らでん)や蒔絵(まきえ)といった加飾の技法も日本で独自に発展しました。漆によって表現された艶やかな文字盤の美しさに、松本幸四郎さんもすっかり心惹(ひ)かれた様子です。

「堆積する闇」を生む0.1ミリの塗りと研ぎ

松本幸四郎(以下、松本) 文字盤そのものは薄いのに、奥行きがあって吸い込まれそう。まさに「漆黒」ですね。谷崎潤一郎が「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」で触れた言葉を借りれば、「闇が堆積(たいせき)した」ような深遠な色合い。どうしたらそのような奥深さを表現できるのですか。

田村一舟(以下、田村) 「堆積」という言葉がありましたが、まさに漆を重ねて塗っていくことで色に深みが出てきます。漆器が海外で「Japan」と評されるように、日本の伝統に根差した色合いであるとも言えます。

松本 塗料をさっと塗って終わりというわけではないのですね。腕時計の文字盤に応用する際に難しかったことは何ですか。

田村 塗りと研ぎを何度も繰り返して仕上げていくのですが、気温や湿度によって漆の乾き方が違ってくるので、その見極めが難しい。漆は空気中の水分を取り込むことで硬くなる性質があるので、梅雨時の方が乾きやすかったりするんです。しかも、漆の厚さを0.1ミリに抑えなくてはなりません。品質チェックを兼ね、最後に指に特殊な粉をつけて艶出しを行うのですが、全工程が手作業になります。理屈で理解して仕事をするというより、これまで重ねてきた経験を頼りに仕事を進めることになります。

一見、単調な作業でも気を抜かずに全力で向き合う。「『到底できない』から始めるのではなく、『どうしたらできるのだろう』という思いから始めるようにしています」と田村さん。その姿勢に松本さんも共感したようです。

「漆でなければ表現することのできない色合い。同じ黒でも普通の黒とは全く違いますね」と、漆芸の奥深さに驚く松本さん。

「未知の体験」への挑戦が伝統を磨き続ける

松本 歌舞伎は1か月の公演で同じ役を演じ続けるわけですが、その日の体調やお客様の反応などは毎回違います。やはり、その見極めが大切になってきます。日々生じる変化を調整しながら、同じ役を演じ切らなくてはならないからです。経験の積み重ねによる感覚が最後はものを言う世界。伝統芸能と伝統工芸には共通する要素があるようですね。

田村 今回のような新しい仕事のお話があると、「難しそう」と緊張しながらも、どこかワクワクしている自分も感じます。そして、壁を一つひとつ乗り越えながら作業をしていると、ある時突然、技量が上がる瞬間があるんです。それがモノを作る喜びにつながっています。伝統に安住しているだけでは、新しい可能性は見えてこないと思っています。

松本 私も同じ思いです。シェークスピアの戯曲を歌舞伎にしたり、スケートリンクで歌舞伎を演じたり。昨年の夏は、オンラインで「図夢(ズーム)歌舞伎『忠臣蔵』」を配信しました。伝統を守り伝えていくためには、世の中の変化に合わせて新しいことに挑戦し続ける必要があると思っているからです。今回、伝統工芸の技が凝縮された様々な「プレザージュ」を見せていただき、関わった人たちの顔が見えてくるモノづくりに大いに刺激を受けました。匠のみなさんが1本の腕時計を通して伝統技術の可能性に真摯(しんし)に向き合っているように、私も歌舞伎の未来を切り開いていきたいと思っています。

経験に裏打ちされた匠たちの技と100年を超す時計づくりの粋が融合した「プレザージュ」。「そうしたモノづくりが日本に残っていることを誇らしく思います」と松本さんは話します。歌舞伎俳優として、革新しながら伝統を守り伝えていくヒントを松本さんは「プレザージュ」にかかわった匠たちとの話し合いからつかんだようです。

左:松本 幸四郎(歌舞伎俳優)
1973年、東京都生まれ。79年、歌舞伎座初舞台。81年に七代目市川染五郎、2018年に十代目松本幸四郎をそれぞれ襲名。 シェークスピアの「ハムレット」やチャップリンの「街の灯」を題材にした新作歌舞伎や現代劇を幅広く演じる。19年度日本芸術院賞受賞。
右:田村 一舟(いっしゅう)(漆芸家)
1957年、石川県生まれ。祖父が蒔絵職人、父が漆職人という家庭で育ち、蒔絵師の清瀬一光師に師事。金沢に伝わる加賀蒔絵を習得後、さまざまな技法を考案。漆器をはじめ、万年筆や腕時計などの加飾も手がけ、その繊細な技が世界的に評価されている。

セイコー プレザージュ 漆ダイヤルモデル

国産初の腕時計として開発され、セイコーの原点でもある「ローレル」のダイヤルレイアウトを採用。黒漆が塗り重ねられた文字盤上で、本金蒔絵で加飾された「12」の数字が輝き、夜空に浮かぶ幽玄な月を思わせます。ムーブメントには高精度を誇る「6Lキャリバー」を搭載。経験に裏打ちされた精緻(せいち)な匠の技と、100年を超す時計づくりの粋が融合した1本は、腕時計としての実用性に加え、商品のまとう豊かな物語を大切にする人たちの期待にきっと応えてくれることでしょう。

SARA023
・駆動方式:自動巻
・ケース:ステンレススチール
・ダイヤル:漆
・ストラップ:クロコダイル
・ガラス:ボックス型サファイアガラス(内面無反射コーティング)
・裏ぶた:サファイアガラス(シースルー・スクリューバック)
・防水性能:日常生活用防水(3気圧防水)
・ケース径:39.5㎜
・ケースコーティング:ダイヤシールド
・キャリバー:6L35(8振動/秒)
・付加機能:日付表示機能
・希望小売価格:440,000円(税込)(税抜 400,000円)
・国内取扱店:セイコーウオッチサロン
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