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世界に流れる時間を旅して ニューヨーク編 世界に流れる時間を旅して ニューヨーク編

世界に流れる
時間を旅してニューヨーク編

様々な人種が集まり、ぶつかり合いながらも不思議と融合し、共生するニューヨーク。
歴史や伝統に囚われることなく、軽やかに異端をも歓迎してくれる気風のよさがここにはある。

とある映像作家の男性が生き方のヒントを求めてこの街を訪れ、滞在し始めてから、ちょうど1年が経つ。

常に新しい何かが生まれ続けるこのニューヨークで、今、人々はどう感じながら過ごしているのだろうか。これは、現地の暮らしに溶け込みながらリアルなニューヨーカーの視点を探った日々の滞在記だ。

ニューヨーク地図
Morning
ニューヨーク朝ニューヨーク朝
 雲一つない清々しい秋晴れの朝、私はブルックリンのアパートで目を覚ました。せっかくNYに住むのだから、滞在期間中は作品制作に集中しながら、ここに住むニューヨーカーたちと同じような気取らない日常を楽しみたいと思っていた。僕のアパートは、人気のウイリアムズバーグ地区にある。このエリアは何かしらいつも新しいことがハプニングしているので、今のニューヨークを感じるのに欠かせない。だから次の映像作品へのインスピレーションを探すためにここに決めたのだ、ーと言いたいところだが、実際は現地に住む友人から教えてもらったローカルの若者たちに今とても人気だというレストラン「LEO」があるということが決め手だった。

 ここのドーナツは小麦粉と水だけを使い、それを発酵させることで作られるシンプルなサワードウの生地で作られていて、風味がとても優しく、中に入ったルバーブやピーチといった季節のフルーツを使ったジャムも甘さ控えめ。店内にはナチュールワインが置いてあったりして、素材や生産背景にこだわっているのが伺える。効率や売上だけを追いかける時代はここNYでももう終わったのかもしれない。
レストラン「LEO」のドーナツ
レストラン「LEO」
レストラン「LEO」のドーナツ
 静かに流れる朝の時間をコーヒーとともに堪能しながら、ふと腕時計に目をやると、まだ朝9時前。 2時と4時位置のボタンを同時に長押しするだけで、ホームとローカルタイムを簡単に切り替えてくれるタイムトランスファー機能を使って日本の時間を見てみる。東京はもうすぐ23時、1日が終わる時間だ。東京とニューヨークの逆転した時間を感じながら、我ながらいい一日のスタートを切ったと満足しつつ、イーストリバー沿いに2年前できたばかりの公園「ドミノパーク」へと歩いてみることにした。

 公園に入るやいなや、パノラマに広がるマンハッタンビューの絶景が視界に飛び込む。天気のよさも相まって、かなりダイナミックに開けたその景色に心躍らされずにはいられなかった。日常の街並の延長に、障害物一つない大胆な摩天楼が存在するというこの思い切りのよさがNYらしい。自分が次に映画を撮る時は、こういう抜けのあるカットは絶対に入れたいなどと考えていると無性にやる気が出てきた。こういう空間に身を置くことで、考え方も開けていくのかもしれない。犬を連れて散歩をする人、カップルで芝生に横たわりながら話し込む人、トランプを楽しむグループなどなど、各々が思い思いに過ごす人たちに、この街の“自由”の断片を感じつつ、ついでだから隣町のグリーンポイントまで足を伸ばしてみようと思いついた。毎週土曜日にはマッカレンパークという公園で、グリーンマーケットが開催されるらしい。ちょっと覗いてみようじゃないか。
マッカレンパーク
マッカレンパーク
マッカレンパーク
Afternoon
ニューヨーク昼ニューヨーク昼
 移動には、Citibikeというシェアバイクが気楽でいい。マンハッタンもブルックリンも網羅しているから、街中のどこででも乗り捨てできるし、最近は電動だってあるのだ。

 マーケットは大繁盛で、色とりどりの野菜を売る出店の前には、長い列ができていた。日本ではあまり見たことのない野菜やフルーツにはいつだって好奇心をそそられる。今回はアパートで料理をする日があってもいいだろう。
ニューヨークの街
 ひとまず明日の朝食用のフルーツでも買おうと並んでいると、後ろに並んでいた男性が話しかけてきた。「初めてきたのか? ここの野菜を食べるともうスーパーのものは食べられなくなる。味は格段に美味しいし、生産者から直接買えるっていうのもいい。今まで以上にシンプルな生き方がしたい気分じゃないか? それにこの青空の下で買い物ができるのが最高に気持ちがいいよな」コロナ禍で大打撃を受けたニューヨーカーたちの中には、自然を求め街から離れる人も少なくないという。

 そしてここに暮らし続ける人もまた、日々の生活のレベルから生き方を見直そうとしているようだ。順番が来て、必要な分だけ買ったフルーツをバックパックに詰め込み、さて、いよいよマンハッタンへと繰り出そう。
ニューヨークのマーケット
ニューヨークのマーケット
ニューヨークのマーケット
Night
ニューヨーク夜ニューヨーク夜
 Citibikeでウイリアムズバーグブリッジを越えれば、20分もしないうちにもうそこはマンハッタンのダウンタウンだ。チャイナタウンのネオンを横目に西へ走ると、今度はハイブランドのブティックが並ぶSOHOエリアに入る。多様なカルチャーがミックスした街並みを眺めながら走り抜けて、辿り着いた先はトライベッカだ。トライベッカは、古き良きNYを感じられるエリアでかねてから気に入っている。時代を感じさせる石畳のストリートや天井の高いロフトのビルなど、まるでマーティン・スコセッシ監督が描くクラシックなNYの世界がここにあるのだ。

 ディナーは80年代からある人気ビストロの「The Odeon」にしよう。ここはウォーホルやバスキアに愛されたことでも知られ、エドワード・ホッパーの絵が再現されているような雰囲気なのも魅力的だ。新鮮なビーフタルタルをつまみにマティーニを飲み干せば、映画の中の主人公になったかのようなグラマラスな気分に陶酔できる。左手に輝く腕時計、セイコー アストロンもまた、その重厚さがブレのないあこがれの主人公像にぴったりだ。

人気ビストロ「The Odeon」

「The Odeon」のビーフタルタル

 時刻は午後9時。陽はすっかり暮れている。ブルックリンへはフェリーに乗って帰ることにしよう。電車やタクシーよりずっと早く川岸に着ける上に、シティビューの夜景までついてくるのだから、選ばない手はない。キラキラと輝く街並みは、ほろ酔いのムードをさらに高めてくれる。帰路につきながら、あの忙しかったニューヨークはコロナ禍という逆境を経て、静かに落ち着きを取り戻すことができたのではないかと思った。過去に囚われることなく何事も受け入れ変化させていくその柔軟さはやはり健在だ。この街の次なる変化を見るために、また必ず戻ってこようと誓った。
マンハッタンのフェリー乗り場
セイコー アストロン グローバルライン スポーツ SBXC063

セイコー アストロン
グローバルライン スポーツ

SBXC063

1969年に誕生した世界初のクオーツ腕時計「クオーツ アストロン」から名前、ブランド理念を受け継ぎ、2012年にデビューしたセイコー アストロン。世界初のGPSソーラーを搭載し、世界中で正確な時を刻む。

¥260,000(+tax)

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