2016年11月10日
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《イベントレポート》「GROOVIN’ TIME 2016 GRAND SEIKO PRESENTS SADAO & BONA」開催

 10月7日から10日まで、東京・丸の内のライブレストラン「コットンクラブ」で、セイコーが協賛するイベント「GROOVIN’ TIME 2016 GRAND SEIKO PRESENTS SADAO & BONA」が開催された。日本を代表するサックスプレーヤー、渡辺貞夫と、カメルーン出身の世界的ベーシスト、リチャード・ボナが共演するライブだ。チケットが瞬く間に売り切れたそのプレミアムライブの初日、マスターショップでグランドセイコーを購入したオーナーだけが加入できる「GS9 Club」の会員100人が招待された。開演の1時間半前にあたる18時に開場されるやいなや、あっという間にフロアを着飾ったゲストが埋める。もちろん、その腕にはグランドセイコーが輝く。

 スペシャルディナーをちょうど味わい終えた、19時。客席の照明が落ち、渡辺貞夫とボナが客席の奥から登場すると、歓声と拍手が沸き起こる。銀髪を撫で付けた渡辺は、83歳という年齢を感じさせないダンディぶりだ。観客を前に、笑顔でマイクの前に立った。
「リチャード・ボナとの出会いは、1999年、彼のデビューアルバムに僕が惚れ込んだのがきっかけでした。彼と一緒に仕事をするたび、『羨望』と『嫉妬』を感じます」
 それから17年、ボナは押しも押されもせぬ、世界屈指の実力派ベーシストとなった。この日のステージにはほかに、ロサンゼルスから来日したピアニスト、イサム・マグレガー、キューバ生まれのドラマー、ルドウィグ・アフォンソ、セネガル出身のパーカッショニスト、ンジャセ・ニャンが参加した。

 渡辺の代表作の一つ、「ランデブー」で軽やかに幕が開くと、南アフリカのズール族の言葉で呪術師を意味する「サンゴマ」を皮切りに、アフリカンテイストの曲が続く。ボナはプレー中、心底楽しそうな笑顔。プレーヤー同士でアイコンタクトしながら、ソロでお互いに刺激し合って、どんどんグルーブ感を増していく。美しいサックスのソロで始まる「アララケ」(セネガル語で「神」の意)では、パーカッションのンジャセ・ニャンがパワフルな歌声で魅了。一瞬にして、会場全体をアフリカの大地へとトリップさせる。前半の締めは、しっとりとしたピアノの音で始まる「I thought of you」。アルトサックスの深い音色が、切なさと優しさを感じさせた。
 ボナの曲「ポンダ」と「カラバンコロ」で始まった後半では、各々の卓越した技が繰り出され、会場はますます白熱。ネックの上を滑るように動き回るボナの左手は、超高速かつ確実に音を生み出していく。彼の透き通った歌声と、ベースの超絶技巧、豊かな表現力は圧倒的。一方、渡辺は余裕を感じさせる老練の深い音色で、会場中を心地よさへと誘った。その左腕では、グランドセイコーの「SBGW031」がスポットライトを浴びてまぶしく輝いていた。最後のナンバーは、渡辺自身が詩に感銘を受けたという、復興応援ソング「花は咲く」。温かく包み込むようなサックスの音色に合わせ、日本語で歌うボナの声が美しい。世界最高峰のプレーヤーたちの共演が可能にした、至福の1時間半だった。
 ホワイエのショーケースでは、グランドセイコー「ブラックセラミックス リミテッドコレクション」や「メカニカルハイビート36000GMT」を展示。帰り際に立ち寄り、改めてグランドセイコーの世界観を確認しながら、ライブの感慨に浸る姿が後を絶たなかった。

ライター:いなもあきこ

GS9クラブ https://www.gs9club.jp/

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