• 写真:SARJ009
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Exhibition 1

書を芸術へ。
墨が語る日本の美。

「日本の美をしなやかに纏う」をコンセプトとする
セイコー プレザージュ クラシックシリーズは、
日本の伝統的な「用の美」から着想を得て、
日常を彩る素材や色を
ダイヤルで表現した時計である。
この美しい時計と、現代の美を探求する
アーティストの感性が響き合う瞬間を切り取る
「ザ プレザージュ ミュージアム」。
その第一回は、書道家・現代アーティストの
郷祥氏のアトリエを訪問し、
その創造性に触れた。

郷祥さん

書道家・現代アーティスト

郷祥さん 書道家・現代アーティスト

郷祥さん

書道家・現代アーティスト

独自に開発した墨と「削る」技法によって、「白と黒」「人工美と自然美」「描くと削る」といった相反する二面性の共存を作品に表現する書道家・現代アーティストの郷祥氏。その独特の世界観で海外でも高く評価される彼は、書を「芸術として日本を守る存在」にしたいという強い使命感を持ち、アートとしての書の可能性に挑み続ける。
今回のナビゲーターは、映像プロデューサーや脚本家としても活躍する俳優のクリス マッコームス氏。郷祥氏のアトリエをたずね、日本の美をより深い目線で探求していく。

ナビゲーター

クリス マッコームスさん

ナビゲーター クリス マッコームスさん

今回のナビゲーターは、映像プロデューサーや脚本家としても活躍する俳優のクリス マッコームス氏。郷祥氏のアトリエをたずね、日本の美をより深い目線で探求していく。

ナビゲーター クリス マッコームスさん

書を芸術へ。
新しい表現を求めて

クリス書道は、筆と墨で美しく文字を書くものだと思っていましたが、実際には、墨の濃淡や線の勢い、余白のバランスなど、とても奥深い世界ですよね。郷祥さんが子どもの頃から学んできた書道を、“芸術”へと昇華しようと思ったきっかけは何ですか?

郷祥子どものころから書道家になりたかったのですが、それはあくまでも夢。実際には大学を卒業して大企業に勤めました。仕事は充実していましたが、やはり書道への思いは断ちがたく、一念発起して、仕事を続けながら書道の師範免許を取得しました。しかしその勉強を通じて、現代の日本では、書道は“芸術”ではないことを改めて知りました。例えば東京藝術大学に、書道科はありませんから。

クリスそれは意外です。西洋の目からすると、書道は素晴らしいアートだと思うのですが。

郷祥そう言っていただけると嬉しいのですが、書道というのはお手本どおりに正しく綺麗に書くことを求める部分もあり、作家自身の個性を反映しづらいのも事実。しかも今はデジタル化で“書く”という経験自体が減ってきており、書道を文化財として保護していこうという流れになっている。でも私は現代にマッチした形で書道の新しい表現を見直し、芸術へと昇華をさせようと考え、現代芸術家としても活動するようになったのです。

漢字をモチーフに選ばなかったのは、漢字の意味から作品を見てしまうため、本当に伝えたいことが伝わらなくなる恐れがある。そこで書のエッセンスである余白や墨跡、筆跡にフォーカスし、現代アートの流れに入れ込むことで作品をつくっています。

クリスたしかに、郷祥さんの作品は墨で描くだけではなく、削ることで白を浮かび上がらせてますよね。とても独創的ですが、その手法はどのように生まれたのですか?

郷祥書を見つめ直し、自分なりのオリジナリティーと言える表現方法を模索しました。そこで文字を書くという行為を遡ると、紙や墨を使う以前は、動物の骨や石碑などを削って文字を書いていた、つまり削ることが“書の本質”なのかもしれないと気付きました。この「削る」を現代の新しい表現として、自分の作品の中に閉じ込めたいと考えたのです。

クリスなるほど、それは興味深いですね。実際に作品はどのようなプロセスで制作するのですか

郷祥まず現代アートとして評価されるためには、アートのどの文脈にあるのか、どこがオリジナリティなのか、そして作品のコンセプトとはなにか。この3つの要素が必要です。それはまさに1本の論文を書くようなイメージ。この論文または設計図を作ることに1年から3年くらいかけます。

例えばこの作品のコンセプトは、“声なき声を拾い上げる”です。香川県の豊島の波やお祭りなどの音を採録し、その音の周波数を抽出して解析すると幾何学的な模様が浮かび上がるんです。これを“島の声”と捉え、私のオリジナルの墨で描いています。

クリス香川という地が、郷祥さんの創作に影響を与えているのですね。

郷祥香川県はすごく心地のいい場所。日本の中で1番面積が小さいけど、海も山もあって、自然に囲まれている。しかし高松駅周辺は程よく都会化されている。この複合的な要素がコンパクトにまとまっているという点こそが、心地よさの正体なのでしょう。私の美意識のひとつである、“相反する二面性の共存”にも繋がっています。香川にいると、あたかも自分の作品の中にいるような感覚があるんです。

写真:SARJ009
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写真:SARX121
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作品と時計に共通する
日本の美

クリス郷祥さんにとって、“日本の美”とはどういうものだと考えていますか?

郷祥言語化が難しいのですが、無機質な空間に1本の直線が引かれているとか、あるいは使い込まれ角の取れた職人の道具など、目に見える事実の裏側にある物語を掴み取ろうとする思想ではないでしょうか。詫び寂びや引き算の美学といった日本人特有の美意識を、作品の中に反映させたいですね。

クリスなるほど。日本の美は、日常の中に潜んでいるのですね。今回、郷祥さんに着用していただいているプレザージュ クラシックシリーズは、日本の工芸や衣服にある用の美から着想を得ています。実際にご覧になって、どのような印象を持たれましたか?

郷祥第一印象として、静かな強さを感じました。主張しすぎてるわけでもなく、でも、確かに存在感がある。装飾的な美しさではなく、使い込まれることを前提とした用の美が息づいています。クリスさんも着用していますが、いかがですか?

クリスまさに日本の美を表現するものですよね。このプレザージュ クラシックシリーズの、絹糸や絹織物のイメージのダイヤルはとても綺麗です。

郷祥絹そのものを精密に再現するのではなく、絹の気配や匂いといった、目に見えない本質的な部分を表現していますよね。まさに日本の時計らしい表現ではないでしょうか。

クリス時計のしなやかなイメージのために、針やインデックスもダイヤルの曲面に合わせてカーブしているんですよ。

郷祥なるほど、腑に落ちました。造形として、1つの作品として仕上がっていると感じていたのは、カーブに沿った形で構成され、それぞれが反発せずに調和しているからなのでしょう。この時計には、私の作品との親和性をすごく感じます。

クリスそれは具体的には、どういった部分ですか?

郷祥まずは時間を素材として使っている点ですね。時計は当然、時間を表現するものですが、私の作品も墨が乾くまでの時間が大事ですし、墨がつくるにじみは、時間が作る芸術そのものだと思います。そしてダイヤルの余白の残し方も共感できる。私も余白の美しさを大事にしていますので。

クリスプレザージュ クラシックシリーズは、日本の美意識を時計という形で世界に届けています。この考え方についてどう思いますか。

郷祥時計というプロダクトの中で、日本の美を現代に沿った形で再解釈していますよね。私も書道を伝統で終わらせるのではなく、自分の表現として問い直している。そういったところにも共通点を見出せます。私は書の本質的なところを抽出し、現代だからこそできる表現と組み合わせて未来に繋げていきたいと思ってます。

写真:SARX121
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写真:SARJ009
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  • 写真:クリスさんと郷祥さん
  • 写真:(左から)TESHIMA #16 ~2025.8.7~ / 803mm×803mm / original ink and Teshima's sand on paper / 2025, TESHIMA #2 ~2025.10.18~ / 803mm×803mm / original ink and Teshima's sand on paper / 2025, TESHIMA #2 ~2025.12.1~ / 803mm×803mm / original ink and Teshima's sand on paper / 2025

    豊島を訪れ、自然の音を採録。採録した音の周波数を解析し、浮かび上がる図形をもとに描いた。
    作品は、声なき声にひとつの形を与える試みである(郷祥)」
    (左から)TESHIMA #16 ~2025.8.7~ / 803mm×803mm / original ink and Teshima's sand on paper / 2025, TESHIMA #2 ~2025.10.18~ / 803mm×803mm / original ink and Teshima's sand on paper / 2025, TESHIMA #2 ~2025.12.1~ / 803mm×803mm / original ink and Teshima's sand on paper / 2025

  • 写真:Waveform ~34.3193,134.0374~ / 652mm×455mm / original ink on paper / 2025

    植物が発する生体電位の波形を「言葉」としてすくい上げた作品。静けさの中に潜む、確かな「声」に耳を傾けたい(郷祥)」
    Waveform ~34.3193,134.0374~ / 652mm×455mm / original ink on paper / 2025

  • 写真:Existence #30 / 652mm×455mm / original ink on paper / 2025

    墨を拭き取り制作した作品。画面上の“白”は、コンポジションの結果生まれる”白以上の白”であり、
    私が追求する”存在”の正体である(郷祥)」
    Existence #30 / 652mm×455mm / original ink on paper / 2025

  • 写真:Natural #35 / 1455mm×894mm / original ink on paper / 2024

    墨の滲みや割れといった自然の動きを切り取り、写真のように示すことで、私たちが信じる「本物」の境界を問い直した(郷祥)」
    Natural #35 / 1455mm×894mm / original ink on paper / 2024

伝統ある書道の枠を超え、新しい表現を生み出す。そのためには、創造性だけでなく、明確なコンテクストやコンセプト、オリジナリティが必要になる。しかもそれを表側には見せず、裏側に感じさせるというのが、日本の美意識でもある。

セイコー プレザージュ クラシックシリーズも同様だ。ハンドメイドにこだわりや伝統的な機械式ムーブメントへの探求を行いつつ、オリジナリティを表現する。郷祥氏の作品とセイコー プレザージュ クラシックシリーズには、歴史的な流れの中にありながら、日本らしい美と独自性を取り入れるという共通点がある。それが大きな共感となって世界へと広がっていくのだ。

日本を巡る

香川

香川の自然と文化に息づく“日本の美”を巡る。

日本で最も面積が小さな県でありながら、歴史、文化、食、自然とさまざまな魅力にあふれた地でもある。“うどん県”という名キャッチコピーでおなじみの讃岐うどんが有名だが、文化面でも見どころは多く、3年に1度開催される瀬戸内国際芸術祭や直島、豊島などは、世界的にも知られたアートの名所に。知的好奇心を満たす旅先としても選ばれている。

写真:栗林公園

16世紀後半に築庭が始まり、江戸時代になっても高松藩主が修築を重ね、1745年に完成。国の特別名勝に指定される文化財庭園の中では最大の面積を持つ。大きな池の周りに起伏に富んだ地形で山や谷を表現した回遊式庭園で、園内を回りながら春夏秋冬でさまざまな景色を楽しめる。なお“栗林”と書くが、園内には栗の木は3本しかなく、多くの松の木で構成されている。三大名園をもしのぐ”お庭の国宝“だ。

写真:SARJ009

SARJ009

写真:クリス マッコームスさんと郷祥さん

「書道の世界では「墨に五彩あり」といわれ、墨一色の中にも、濃淡や滲み、渇筆などの多様な表現(五彩)があるとされます。プレザージュ クラシックシリーズSARJ009の炭色(すみいろ)は、鑑賞者によっていろいろな見え方となる色彩豊かな時計だと思います」(郷祥)

写真:SARX121

SARX121

写真:掬月亭(きくげつてい)

歴代藩主が愛した「掬月亭(きくげつてい)」は、17世紀後半に建てられた。四方に正面がある数寄屋造りの建物で、低く抑えられた床に座ると水面に近づき、湖面に映る木々が美しく目に飛び込んでくる。

写真:栗林公園の松

常に緑をたたえる松は、長寿の象徴として好まれたため、栗林公園には約1500本の松が植えられている。“一歩一景”(一歩進むごとに景色が変わる)という言葉で表現される美しい庭園を構成する重要な存在だ。

写真:瀬戸内海とSARX129

瀬戸内海は、内海ならではの穏やかな景色が美しい観光エリア。3年に1度開催される瀬戸内国際芸術祭の会場となっているほか、会期以外も直島や豊島など様々な島でアートを楽しむことができる。その他にも、大自然や美食、ホテルステイなど、目的に合わせてアイランドホッピングするというのも楽しい。次々と現れる島影を見ながらのクルーズは、国内であることを忘れてしまうほどだ。

写真:SARX129

SARX129

写真:エンジェルロード

瀬戸内海で2番目に大きい小豆島は、映画やドラマの舞台としても有名だが、高松港からはフェリーで約60分と交通至便。その新たな観光名所「エンジェルロード」は、1日2回、干潮時に海の中から現れる砂の道(陸繋砂州)。大切な人と手をつないで渡ると、願いが叶うというロマンティックな物語がある。手前にある弁天島の山頂にある「約束の丘展望台」で、幸せの鐘を鳴らすのも定番だ。

写真:SARX129

SARX129

写真:寒霞渓(かんかけい)

日本三大溪谷美のひとつである「寒霞渓(かんかけい)」は、古くからその雄大な景色で人気を集めてきた。1934年には日本で最初の国立公園(瀬戸内海国立公園)が定められたが、その代表的な景勝地にも指定されている。ロープウェイが整備されているので、そのダイナミックな岩々を間近に見ることができる。

写真:直島

かつては金属精錬の島だった「直島」は、1990年代にアートの島として発展。世界的アーティストや建築家の作品が島のいたるところにあり、世界的人気観光地に。その代表作が草間彌生の「赤かぼちゃ」で、海の玄関口である宮浦港のシンボルとなっている。

写真:直島パヴィリオン

建築家の藤本壮介が手掛けた「直島パヴィリオン」は、町政60周年を記念したプロジェクト。27の島々で構成される直島町の「28番目の島」がコンセプトで、約250枚のステンレスメッシュで構成されており、高さは7mにもなる。夜になるとライトアップされ、美しい造型を表現する。こちらも写真映えするスポットだ。

写真:オリーブ園とSARX129

小豆島は日本における産業用オリーブ発祥の地。温暖で日照量が多く、程よい降水量もオリーブ栽培に適し、国産最大のオリーブ産地となった。2019年に開園100周年を迎えた「オリーブ園」は、国産オリーブ栽培の草分け的存在であり、今でも園内に存在する原木たちがオリーブの実を結んでいる。小豆島産のオリーブはすべて手摘みで収穫され、温度管理を徹底し、最高のオリーブオイルを製作している。

写真:SARX129

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写真:道の駅 小豆島 オリーブ公園

「道の駅 小豆島 オリーブ公園」は、小豆島におけるオリーブ文化を学ぶことができ、お土産品も充実した道の駅。公園内の小高い丘には、姉妹島提携を結ぶギリシャ・ミロス島との友好の証として建設された白いギリシャ風車があり、思い出に残る写真が撮影できる。

写真:SARX129

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写真:うどん

地理的条件から雨が少ないため、米の不作に備えて、乾燥に強い小麦を栽培してきた。なかでも「うどん」は、農耕行事、年中行事、冠婚葬祭など、特別な日の郷土料理として江戸時代から根付いている。麺の製造に必要な塩やだしに使う醤油やイリコの産地でもあったことから、県内には数多くのうどん店ができ、多くの人々を呼び寄せる観光資源となっている。

写真:骨付鳥

「骨付鳥」は、香川県丸亀市発祥のグルメ。使用する鶏は2種類で、しっかりとした歯ごたえが特徴的な親鳥(通称、おや)は、味わい深く噛み応えはかなりしっかりしている。いっぽうの若鳥(通称、わか)は、ふっくらと柔らかい肉質なので食べやすい。食べ比べがおすすめだ。

写真:ヤマロク醤油

塩づくりが盛んであった小豆島では、400年前には醤油づくりも始まった。日本四大醤油産地のひとつであり、現在も20軒以上の醤油醸造所がある。そのひとつである「ヤマロク醤油」では、伝統的な杉樽を使用し、百を超える微生物たちの力で醸すことで芳醇な味わいをもつ醤油をつくっている。

写真:オリーブハマチ

穏やかな瀬戸内海で世界初のハマチ養殖を成功させた香川県では、餌に小豆島名産のオリーブの葉を混ぜた「オリーブハマチ」が有名。しっかり脂がのっているのに、さっぱりとした味わいと適度な歯ごたえが魅力だ。

写真:オリーブ牛(ぎゅう)

名物の「オリーブ牛(ぎゅう)」とは、香川県のブランド牛である「讃岐牛(さぬきうし)」に、高品質のオリーブオイルを搾った後のオリーブの果実を乾燥させて、餌として与えて育てたもの。オリーブに豊富に含まれるオレイン酸や抗酸化成分によって、さっぱりとした脂になる。