セイコー プレザージュ × 松本幸四郎氏 対談
日本の伝統に息づく美と技

VOL.3 琺瑯ダイヤルモデル ー 究極の白さを生み出す「匠の世界」

伝統文化にかかわる者として勇気づけられます――。袖口からのぞく「セイコー プレザージュ」を見つめながら、歌舞伎俳優の松本幸四郎さんはそう話します。日本の美意識を世界に発信し続ける時計づくりが、伝統芸の魅力を伝える自身の取り組みとシンクロするからです。そんな松本さんが伝統工芸の匠たちと語り合うシリーズ。有田焼、七宝に続く第3回は、長きにわたって色あせることのない琺瑯(ほうろう)ダイヤルモデルの魅力がテーマです。

琺瑯は、金属の表面にガラス質の釉薬(ゆうやく)を高温で焼き付ける技法のこと。釉薬に由来する化学的耐久性があり、調理器具やバスタブといった日用品をはじめ、住設機器やホワイトボードなどにも使われています。独特のぬくもりも感じさせることから、近年は若者を中心に調理器具としての魅力が再評価されています。文字盤を覆う琺瑯の艶(つや)やかな白さに、松本幸四郎さんもすっかり魅せられた様子です。

0.01ミリ単位で調整、命を吹き込む

松本幸四郎(以下、松本) 文字盤の優雅な白さが印象的ですね。それでいながら冷たい感じがせず、むしろぬくもりを感じさせてくれます。日用品に使われているイメージがある琺瑯ですが、腕時計のような精密機械に応用されるケースはあったのですか。

横澤満(以下、横澤) 実はセイコーが1913年に発売した国産初の腕時計「ローレル」の文字盤にも琺瑯が採用されていたと聞いて、それを現代によみがえらせることに職人としてやりがいを感じました。当時のローレルは今見ても文字盤が色あせておらず、琺瑯の魅力を十分に保ち続けていることに私自身も感動しました。

松本 「腕時計の顔」となるわけですから、気合が入りますよね。実際に取り組んでみて、どの工程が最も難しかったですか。

横澤 文字盤が直径約3センチと小さく、サブダイヤルなどもあるため、釉薬を均一な厚さで金属に塗布することに細心の注意を要します。食器などの場合は、厚さにある程度のばらつきがあっても許されますが、腕時計の場合、針の動きを妨げることもあるのでそうはいきません。釉薬を吹き付ける厚さが厳密に指定されています。一方で白という色をはっきり出すためには釉薬をしっかりと定着させなくてはなりません。そのためには釉薬を吹き付ける際に0.01ミリ単位の調整が求められ、最終的には感覚の世界になってきます。

指定されたものに真摯(しんし)に向き合って、一定の品質を保ちながら作り上げる。そうしたモノづくりの姿勢に、1か月という期間、基本的に決められた同じ役をブレなく演じ続けなければならない歌舞伎俳優という松本さんの仕事が重なったようです。

「文字盤のぬくもりある白さが、長く色あせず保たれることに正直驚きました」とプレザージュを見つめながら話す松本さん。

鍛錬の日々、磨き続ける不変の精度

松本 一定の精度を保ってモノを作り続ける。そこに横澤さんの匠としての経験が生かされるわけですね。ある意味、歌舞伎も似ていて、1か月の公演で同じ役を演じるわけですが、その日の体調やお客様の反応などは毎回違います。その中で同じ役をいかに演じ切ることができるかが、実は大変なことだと思っています。

横澤 同じモノを作るために、私も毎日のように試行錯誤を重ねています。気候によって仕上がりは影響を受けます。設備の整った施設の中でも、真夏の晴天時には湿度が低くなり、釉薬の乾き具合が変わってきます。それに対処するための客観的なデータはそろっているのですが、雨が突然降ったりすると仕上げを微調整しなくてはなりません。自分の体調の良しあしによっても仕上がりは変わってくるように思います。いずれにしてもマニュアル通りにはいかないというのが事実で、経験を重ねるしかありません。

松本 新型コロナウイルスの影響で劇場公演が難しくなる中、この夏、オンライン歌舞伎「図夢(ズーム)歌舞伎『忠臣蔵』」を配信しました。演者とお客様がそれぞれ「3密(密閉、密集、密接)」を避けるため、ネットの会議システム「Zoom」を活用しました。「初めて尽くし」で挑戦の連続でしたが、世の中の変化に合わせて「歌舞伎の可能性」を探ることができたと思っています。横澤さんが「プレザージュ」という舞台で、琺瑯という伝統技術によるモノづくりに真摯に向き合っているように、私も歌舞伎の未来を切り開いていきたいと思っています。

歌舞伎と琺瑯。一見、無関係な両者が「伝統に向き合う」という共通項で結びつきました。今回の対談は、伝統は守るものではなく、常に変革を重ねる中で次代に伝えられていくことを再認識する機会になったようです。

左:松本 幸四郎(歌舞伎俳優)
1973年、東京都生まれ。79年、歌舞伎座初舞台。81年に七代目市川染五郎、2018年に十代目松本幸四郎をそれぞれ襲名。 シェークスピアの「ハムレット」やチャップリンの「街の灯」を題材にした新作歌舞伎や現代劇を幅広く演じる。19年度日本芸術院賞受賞。
右:横澤 満(富士琺瑯工業 琺瑯職人)
1952年、福島県生まれ。71年、富士琺瑯工業に入社し、琺瑯製品の製造や商品開発に携わる。塗布面の厚さを0.01ミリ単位で仕上げる能力を持つ日本でも数少ない琺瑯職人の一人。現在は富士琺瑯工業のつくば工場で、若手職人の養成にも力を入れている。

セイコー プレザージュ 琺瑯ダイヤルモデル

国産初の腕時計「ローレル」の文字盤素材として用いられた琺瑯を採用。さらに文字盤のレイアウトにセイコー初となる懐中時計「TIME KEEPER」を連想させる極細のローマ数字を使い、ノスタルジックな雰囲気を演出します。ムーブメントには高精度を誇る「Cal.6R27」を搭載。鍛錬の日々に裏付けられた匠の技と100年を超す時計づくりの技術が融合した1本は、腕時計としての実用性に加え、商品のまとう豊かな物語を大切にするファンをきっと納得させるはずです。

SARW035
・駆動方式:自動巻
・ケース:ステンレススチール
・ダイヤル:琺瑯
・ストラップ:クロコダイル
・ガラス:デュアルカーブサファイアガラス(内面無反射コーティング)
・裏ぶた:サファイアガラス(シースルー・スクリューバック)
・防水性能:日常生活用防水(10気圧防水)
・ケース径:40.5㎜
・キャリバー:6R27(8振動/秒)
・付加機能:日付表示機能、パワーリザーブ表示機能
・希望小売価格:132,000円(税込)(税抜 120,000円)
・国内取扱店:セイコーウオッチサロン
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