セイコー プレザージュ × 松本幸四郎氏 対談
日本の伝統に息づく美と技

VOL.2 七宝ダイヤルモデル ー 小さな円盤に広がる紺碧(こんぺき)の海

自分の仕事と重なるような気がします――。歌舞伎俳優の松本幸四郎さんは「セイコー プレザージュ」を手にしてそう話します。伝統芸の魅力を世界に伝え広げたいという思いが、日本の美意識を世界に発信し続けてきた時計づくりと共鳴するからです。そんな松本さんが伝統工芸の匠たちと語り合うシリーズ。第2回は、ガラス質の釉薬(ゆうやく)を金属の上で焼成することで、海原を思わせる紺碧に煌(きら)めく七宝ダイヤルモデルについて。

七宝は、金属の素地にガラス質の釉薬を載せ、高温で焼き付ける装飾技法。英語で「エナメル」とも呼ばれ、紀元前の古代エジプトまで起源をさかのぼれます。日本の七宝が世界で注目されるようになったのは幕末に入ってから。「近代七宝の祖」とされる尾張藩士の梶常吉が現代に通じる技法を発明。七宝ダイヤルの製作を手がけた安藤七宝店も「尾張七宝」の流れを汲(く)んでいます。明治時代に入ると、繊細で鮮やかな彩色の工芸品が海外で高く評価され、盛んに輸出されました。近年は、細密な絵柄が超絶技巧として日本の若い世代の間でも再評価されています。波形に型打ちされた文字盤を覆う七宝の透き通った青さに、松本幸四郎さんも見入っていました。

波形に型打ちされた文字盤を覆う七宝の透き通った青さ

松本幸四郎(以下、松本) この小さな円盤の上に、真っ青な海が広がっているよう。美しいですね。このように透明感があるのに奥行きも感じさせる色合いをどうやって表現しているのですか。

戸谷航(以下、戸谷) 金属の素地へ独自に調合した釉薬を薄く塗って窯で焼く――。その工程を何度か繰り返し、表面を研磨して意図した色に近づけていきます。焼成温度や時間のわずかなずれでも色合いが微妙に変化するので、色をそろえるためには一つひとつ人の手で調整しなくてはなりません。

松本 釉薬を塗るだけでなく、その前段階の釉薬の調合から手がけているとは思いませんでした。手仕事だからこそ出せる色なのですね。七宝と言っても一点物の工芸品の創作とは異なる難しさもあったのではありませんか。

戸谷 一般的な商品では釉薬を1ミリから1.5ミリの厚さに塗り重ねるのですが、今回のプロジェクトでは0.3ミリという薄さで濃い青色を出さなくてはなりませんでした。また、セイコー独自の厳しい環境保護基準をクリアするため、一般的な釉薬に約4割含まれている鉛も使えません。無鉛釉薬は小さな気泡ができやすいのです。しかも、量産品なので仕上がりをそろえる必要があります。どれを取っても私にとって初めての経験で、「これでいける」という方向性をみいだすまで時間がかかりました。

作業の数値化や理屈を超え、経験の積み重ねによって新たな世界を切り開いていく戸谷さんの姿勢に、松本さんも自らの仕事への思いが重なるようです。

「光の当たり具合によっても色合いが微妙に変化して、見ていて飽きませんね」とプレザージュを手にして話す松本さん。

昨日より良いものを今日作り、今日より良いものを明日作ろう

松本 歌舞伎の場合、1か月の公演で同じ役を大体25回演じます。その中でどうしてもできなかったことが、ある時できるようになったりします。ところが、今度は別のところがわからなくなってきます。10年後に「ああ、そうだったのか」と腑(ふ)に落ちることもあります。私の仕事はその繰り返し。「これでできた」と思ったことはありません。むしろ、「よしっ、できた」と思ったら、もう俳優を続けていても意味がないというか、やめてしまうような気がしております。これは戸谷さんの仕事も同じではないかと思うのですが、決して理詰めで解決できるものではないのですね。

戸谷 私も、日々の仕事で気づいた課題を一つひとつ克服していくことが仕事の原動力になっています。「昨日より良いものを今日作り、今日より良いものを明日作ろう」をモットーにしています。その点でも、プレザージュのプロジェクトに参加したことは、自分の仕事を見つめ直し、新しい分野に挑戦するきっかけを与えてくれたと思っています。

松本 私も古典以外に、スケートリンクで歌舞伎を演じたり、演出にプロジェクションマッピングを取り入れた作品を海外で発表したりしています。伝統はもちろん大切です。ただ、そこに安住するのではなく、歌舞伎の可能性を広げていきたいとも思っています。戸谷さんが「プレザージュ」という舞台で、七宝という伝統工芸の可能性を切り開いている様子をうかがい、私も勇気づけられた気がしました。

2人とも伝統に培われた技を習得する中で、経験に裏打ちされた感覚を研ぎ澄ましながら道を切り開いてきました。高精密な機械やAIによっても実現できない匠の技――。人間に残された可能性の大きさを、プレザージュの七宝ダイヤルモデルが雄弁に語ってくれているようです。

左:松本 幸四郎(歌舞伎俳優)
1973年、東京都生まれ。79年、歌舞伎座初舞台。81年に七代目市川染五郎、2018年に十代目松本幸四郎をそれぞれ襲名。 シェークスピアの「ハムレット」やチャップリンの「街の灯」を題材にした新作歌舞伎や現代劇を幅広く演じる。19年度日本芸術院賞受賞。
右:戸谷 航(安藤七宝店施釉師(せゆうし))
1985年、愛知県生まれ。幼い時から好きだったモノづくりが高じて焼き物やデザインを教える同県立瀬戸窯業高校に入学。高校2年生の職業体験で七宝に初めて触れ、「自分に向いてそう」と安藤七宝店に入社。尾張七宝で最も重要とされる「釉薬差し」を担当する。

セイコー プレザージュ 七宝ダイヤルモデル

海を思わせる奥行きと透明感のある青色を七宝で表現。国産初の腕時計として開発され、セイコーの原点でもある「ローレル」のダイヤルレイアウトを採用。ボックス型サファイアガラスでケースの薄さを演出し、独特の光の揺らぎが七宝ダイヤルの美しさを際立たせます。ムーブメントも高精度を誇る「Cal.6L35」を搭載し、機械式時計のファンが求めるスペックも十分満たしています。その精密な機能美はシースルーバックからも確認できます。ストラップは、光沢のある茶色のクロコダイル製。伝統工芸の粋と100年を超す時計づくりの技術が融合した一本は、腕時計としての実用性に加え、商品のまとう豊かな物語を大切にするファンをきっと納得させるはずです。

SARA021
・駆動方式:自動巻
・ケース:ステンレススチール
・ダイヤル:七宝
・ストラップ:クロコダイル
・ガラス:ボックス型サファイアガラス(内面無反射コーティング)
・裏ぶた:サファイアガラス(シースルー・スクリューバック)
・防水性能:日常生活用防水(3気圧防水)
・ケース径:39.5㎜
・ケースコーティング:ダイヤシールド
・キャリバー:6L35(8振動/秒)
・付加機能:日付表示機能
・希望小売価格:440,000円(税込)(税抜 400,000円)
・国内取扱店:セイコーウオッチサロン
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