# 01 “私らしさ”とは?

  • ――今すごく自分らしいな、と思う瞬間はありますか?

     人間なので、どうしても自分らしさを定義づける瞬間ってあると思うんです。私はきっとこういうタイプで、っていう。でも、その自分らしさが「変化していくこと」を楽しむことこそが、ひとつの私らしさだと感じています。生き物である限り変化する。それが楽しいものだととらえることで、怖がらないようにするっていうのが私っぽい、かな。

  • ――自分らしさを見つけにくいと思っている人に何かアドバイスを。

     無理もないことだと思うんです。自分の立ち位置を確認したり、変えたりしながら、みんな踏ん張っている人も多いと思うから。
     でも自分を思いっきり大切にする時間を、惜しんじゃいけないなと。人から得たもので明日も頑張ろうとすると、それが正しくなかった時に、本当に何もできなくなるので。持続可能な自信を育てるためには、自分を知って大切にすることなのかなと思います。

  • ――自分らしさを人にわかるように表現することは大切だと思いますか?

     人にわかってもらおうとすると、自分のことをカテゴリー付けしてしまうから。それに、自分のことを知れば知るほど、表現する必要がないことに気づくと思う。考えすぎず、近道しようとしないこと。そして、自分が人のことを色眼鏡で見ないこと、ですかね。

# 02 働くということ

  • ――昨年は大変な一年でしたが、お仕事に対する考えは変わりましたか?

     不安が増えるほど、私は能天気になりました。幸せ上手になればいいのかなと思って。賢く対策を練っても、予想のつかないことが起きるものなんだ、と。元々の性格的に、勉強はする方だと思うんですけど、知識を増やしてあんまり打算的に動き過ぎると、復帰するのにすごく時間がかかる。なので寝る前に目を閉じて、あの人にありがとうって言い忘れちゃった。明日言おうとか。肩の荷や、余計に入っている力を抜くようにしています。

  • ――お仕事で不安なことがあった時に、どう前向きに切り替えていますか?

     私ってバリキャリだからなー、と思ってみる。私って結局働いちゃうんだよな、あちゃーっていうような(笑)。私は特に、得意不得意を意識しすぎると、得意なことしかやらなくなるんですよ。苦手なことが怖くなって、どんどんその仕事を避けてしまったり。そうすると、あと一日練習すればできたことでも諦めることになるので、なるべく真面目であることを面白がる。それが私のやり方です。

  • ――働く女性たちに声をかけるとしたら。

     とはいえ、バリキャリの呪いは絶対自分にかけてはいけない。自分で自分に制限をかけないこと。そして、多くを求めることを恥じないこと。豊かな生活も、忙しい仕事の日々も、両立するつもりで、トライアンドエラーでやっていけば、バランサーになれるはず。もちろん、どっちかだけでも、自分にフィットしていればいいと思います。

# 03 挑戦すること

  • ――色々なキャリアに挑戦されるなかで、思うことは?

     私の働き方としては、一人で前に突き進んでいるように見えても、すごく用意周到でボクシングで言うセコンドのような人が必ずいる状態なんです。人とそこまでの信頼関係を築くことは、精神的にもすごく疲れると思うんですけど、そこを怠ると長く戦えないから。挑戦をする時はなるべく、親しい人や仕事仲間に、「これから頑張るからさ、ちょっと慰めてね、今度。」と言える環境を作っておくことが大切だと思っています。

  • ――挑戦を繰り返す中で、不安を感じることはありますか?

     100時間練習したって不安は感じるので。不安を感じないようにするのは無理だから。たぶんそういう生き物なんだと思います。緊張はするし、不安だなと思うけど、寝たら明日は来るしなあ、と。不安が終わるまで、のらりくらりと生きるというか。

  • ――向いてないなあ、と思うことについて。

     一日の中で、そのことについて考える時間を増やして、どうにか折り合いがつかないか冷静に考える。でも本当に向いてないことに関しては、さっき言っていたセコンドのような人に「ちょっと、明日から心折れてくるわ。」と先に伝えて、仲間を頼る。それか、やらない。やった方が面白いっていうのは理解しつつも、自分の心が80%ぐらいまでに整えられなかったら、それはやらない方がいいと思います。

# 04 “愛”というもの

  • ――ふだん愛情を相手に表現する?それとも秘めているタイプ?

     みんな大好きだって思っていますが、わざわざ言わないです。それなら仕事で返したいって思っちゃうから。でも、愛は無限大だと思うようにしていますね。愛情をあげている気になると、疲れちゃうから。だけど、愛は自然と湧いてくるもので、制限のないもの。そしてすごく純度が高くて、愛おしいものだと感じるようにしてます。

  • ――自分自身を愛することについて。

     生きているだけでえらい。朝起きて、現場に行ってみんなにおはようって言った。それだけでえらい。もうこれは、私が今私にできる最大の幸せな生き方です。自分にご褒美を買うのも肯定的で、お買い物ひとつにも意味を持っていたい。頑張ったご褒美、もしくはひと区切りとして、もう頑張りすぎだからここまでにしとこうっていうのもいい。時計は特にそうだと思うんですが、これから頑張りたい時に、自分を底上げしてくれるようなものを手に入れるのもいいと思います。
     自分で働いて、全部自分で買うのが幸せ。とても大切にします。それも愛なのかなと思います、ひとつの。

  • ――愛情を表現できない、持てないと思っている人にアドバイスを。

     愛情を必ず持ちましょう、とは言えないです。だけど、より自分を理解することによって、他者を深く愛することができると思います。愛情を持つ余裕がなければ、それは自分への愛情や関心、理解が足りていない。そこがおろそかになっているからこそ、他者にそれをする余裕がないというか。まずは、自分について興味を持てるようになったらハッピーですよね。

# 05 選択するということ

  • ――身に着けるものを選ぶ時の基準や、考え方について。

     私はこういう人間です、って伝えたい日とそうでない日があるんです。伝えたくない日は、とにかく自分の知識欲を貪欲に、満たしたい日。そういう時は、より無骨なビジュアルを望みます。今日(インタビュー日)も、だから黒。印象は見る人にお任せします、という気持ちで。また本当に仕事が好きで来ている時は、そんなに見た目を飾らないですね。これが私の中のシルバーとゴールドの違いだと思うんですけど、身に着けるものもシルバーとか、素材そのものの色を選ぶのかな。
     あとは、気に入ったものは色違いで持つことが多いです。作り手の思いが好き、そして素材も好き。でも、見え方はその日それぞれで、なんか黒だと重いなって言う日も、白だと明るいなっていう日もあるし。なので色違いで買っちゃいます。
     ブランドの概要みたいなものはしっかり読むようにしています。わかる人にはわかるし、深いところで共感し合えると思うので。

  • ――ブランドや作り手の思いに共感するから買う、みたいなことも?

     主にそうです。共感しないと、あんまり買わないかもしれない。みんなと同じことをするよりも、愛着が湧くという意味で。自分の意思を通した買い物をすることがほとんどだと思います。仕事もそうですけどね。

  • ――何かを手放す時の基準は?

     心が動かなくなったら、手放します。思い出さなくなったり、無理してるな、とふと我に返ったりしたら手放していい時だと思う。

  • ――人生において大きな選択はありましたか?

     選択しなかった方を諦めたことはないです。一度変わったとしても、また変えられますからね。手放すっていうよりも、ちょっと遠くにいったん置いておいて、また落ち着いたら取りに行こうという感覚でいます。

  • ――迷った時は、どういうふうに選ぶものを決めていますか?

     そもそも完全に諦める必要ってあるんだっけ?と考えています。その気持ちを保留にしておくことで、いつか実るんじゃないのかと。そこをじっくり考えるようにしています。

# 06 身に着けるもの

  • ――普段身に着ける時計について。

     お仕事だったり、フォーマルの場所では特に着けることが多いです。あとは、今日は働くぞ、という日はピアスを着けない代わりに、存在感のあるシルバーのものを選んだりします。

  • ――時計が気持ちのスイッチになるような?

     そうですね。ちょっと丁寧に生きる感覚がある気がするんです。時計を身にまとうことで、ひとつそこにアクションが足される感じが心地がいい。

  • ――素敵だなと思う時計って、どんなものですか?

     好みですけど、「女性だから」ではなく、一人の人として選択しているという筋を通したい日があるんです。そういう日は、可愛らしすぎるものは自分にはあんまり馴染まないので、光沢の少ない黒や、洗練されたものを選びます。

  • ――可愛らしすぎるものは、女の子らしいという型に自分をはめている?

     そうですね。誰かに女性らしくて素敵と思って欲しくて、華奢な時計を着けているわけじゃない。自分によりフィットして心地がいいものを着けていたい。
     あまり、男とか女って言葉を気にしなくていいと思うんです。もっとジェンダーに関係なく、“自分”でいられるように。

  • ――自分に何が似合うかわからない、と感じている女性に言葉をかけるとしたら?

     確かに、自分にすっと馴染むものっていうのは絶対にあります。だけど、「これは似合わない」と思う感覚が正しいかどうかは、一生わからないので。まずは似合う似合わない以上に、好きか否かっていうところを大切にすればいいと思いますね。

# 07 人と人との関わり

  • ――普段人と接する時に、大切にされていることを教えてください。

     不器用なりにちゃんと喋る。私はそんなに喋りが得意ではないので、端的に伝えなきゃって、焦って適当なことを話さないようにしたい。なるべくちゃんと考えながら、不器用なりに喋るようにしています。それとこれに尽きると思うんですが、人は会うまでわからない、ということを楽しむこと。

  • ――先入観を持たないように、ということでしょうか。

     はい。人に対して先入観を持たない。人と人との関わりに、百点満点はないと思うんですよね。相手のことを100%わかることって本当に難しくて、わかった気になるほうが危ない。知っている気になると、視野が狭くなってしまうので。親友だったとしても、それくらいの方が、ずっと興味を持ち続けられるので楽しいです。

  • ――人間関係で悩む時はありますか?

     実は、相当な人見知りなんです。でもそれに悩んではいなくて(笑)。ただ、仕事においては人と密接に関わるので、相手の気持ちを尊重するように心がけています。女優や監督として先頭に立っている時、周りに指示をした方が円滑に進むように感じるけれど、実際はそうではない。自分の想いを丁寧に伝えることを、すごく大切にしています。誰かと関わるときは、同じ方向を見て、目的に共感してもらわなきゃいけないと思うので。そこはおろそかにしないように。でもプライベートは、話は別です。

# 08 強さとは

  • ――池田さんにとって、「強さ」とは、どういうことだと思いますか?

     最初から強いわけじゃないので、弱い時のことを忘れないこと。弱かった時に感じた劣等感、悔しさ、やるせなさ。それを忘れて鈍感になると、人に共感できなくなり、一人で突き進んでいる気になっちゃう。だから常に、自分の弱いところを宝箱みたいなものに入れながら進んでいきたい。
     怒りを活力にしすぎると他者に優しくする余裕がなくなる。弱さは、一番大切にするべきなのかなって思います。

  • ――自分が感じた色々な気持ちを、忘れないということでしょうか。

     はい。それが、周りの人を理解しようとすることにも繋がるし、悩んでいる人や困っている人を、よりサポートできると思うので。
     あと、私の仕事でいうと、自分の弱いところをなるべく綺麗な形で、クリエイティブに表現したいと思っています。弱さが真っ黒な石でゴン!って出てきたとして、それを削って削って綺麗な形にして浄化する。そんな風に、いずれポジティブな形で浄化してあげようって、いろんな気持ちを大切にとっておく。それが私なりの足取りの強さなのかなって思います。

# 09 今を生きる

  • ――コロナ禍で、今という時間を主体的に使う女性たちが増えてきています。池田さんが“今を生きる”上で意識していることはありますか?

     「最近の世の中さ」という言葉をよく耳にするんですけど、それを言わないで生きる。自分もその世の中の一人なんだ、という意識が、自分の可能性を広げてくれると思うので。世の中の一員として生きていることにワクワクすることが大事だと思います。そして、自分を俯瞰で見すぎないこと。一日の半分ぐらいは超主観でいいと思う。手放しに夢を持つ瞬間があってもいいのかなって。

  • ――“夢”を持てない人も、多い時代ですよね。

     今の時代、世界中のニュースが手元にあるからこそ、世界はそれだけじゃないはずなのに、それだけの気になってしまうんだと思うんです。だけど、私たち一人一人の気持ちで世の中は変えていける、ということを伝えていきたいと思っています。

  • ――池田さんは、“今”以外のところに目が向いてしまう瞬間はありますか?

     あります。でも、そういうものだと思うんです。ただ、未来を預言者のように考えても、結局はわからない。予測をし過ぎて外れてしまった時に何もできなくならないように、何があっても足取りが乱れないような、精神的な強さを育てていくことが大切だと思います。

# 10 未来をどう描くか

  • ――未来をどう作るかというテーマです。

     とりあえず生きてみようよっていうのが、土台にあります。その上で、やっぱり一人ひとりが、みんな違うと自覚することが大切だと思います。一人ひとりの意思を尊重して、生きていく。だから、自分の選択に意味を持つことが大切なんですよね。自分で選んだことを誇りに思うことが、より良い未来を作ってくのかなと。

  • ――10年後はどういう自分になっていたいですか。変わっていくを楽しむとのことなので、もしかしたら決めないようにしていますか?

     決めないです。というのも、今思いつくようなところでは留まっていたくないっていう野心が強い。もっといけるでしょ、と思ってしまうんです。

  • ――未来を自分で切り開いていこうとしている人に、何か声をかけるとしたら?

     自分を知ることで、自分の発言に説得力が出る。そうすると、周りの人たちの気持ちも動く。未来を切り開いていく環境が整っていくと思います。結果だけに人がついてくる気がしてしまうんですが、違う。それ以上に、自分に共感して応援してくれる人の力は、揺るぎない存在だと思うんです。だからまずは、心地のいい自分を探ってみることから始めてみては。

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公式Instagramはじめました
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池田エライザ

1996年4月16日生まれ、福岡県出身。2009年、ファッション誌「ニコラ」の第13回ニコラモデル・オーディションでグランプリを受賞し、モデル活動をスタート。2011年、映画「高校デビュー」で女優デビューを果たす。以後、初のヒロイン役を務めた映画「みんな!エスパーだよ!」(2015年)など、数々の話題作に出演。2020年には、自身が原案・初監督を務めた映画「夏、至るころ」が公開。今後の期待作に、映画『騙し絵の牙』(2021年3月26日公開)、映画『映画 賭ケグルイ 絶対絶命ロシアンルーレット』(2021年4月29日公開)、映画『真夜中乙女戦争』(2022年冬公開予定)などがある。